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2011.11.08 

麻生俊平「ザンヤルマの剣士」全9巻


「――――自分は、主人を渡り歩く人間を好まない。お前も自分の人生の主人になれ」
(ザンヤルマの剣士7「モノクロームの残影」P297より)


富士見ファンタジア文庫の歴史に燦然と輝く伝記ライトノベル。古代文明イェマドの強大な遺産"ザンヤルマの剣"を継承した青年矢神遼と他の遺産継承者たちとの闘いを描く。刊行期間は1992~1997年。ドラゴンマガジンに掲載された読み切り短編(長編シリーズ化以前のものは設定が異なる)を集めた外伝も一冊発売されている。
矢神遼は臆病で人付き合いが苦手な高校二年生。近々いとこの女の子が同じマンションに引っ越して来ると知らされ、毎日が憂鬱で仕方がない。ある日、学校帰りに行きつけのアンティークショップに寄った遼は、そこで奇妙な紳士と出会う。骨董屋らしきその男は遼に奇妙な形の短剣を手渡す。剣を手にしたその日から遼の周囲で人が殺され始め、しかも被害者は遼に不快な思いをさせた人間ばかりだった・・・。
ザンヤルマはドラゴンマガジンで連載されていた読み切り短編からのファン。これに出会った頃はライトノベルのアニメ脚本化やハーレム作品の流行、減り続ける単行本のページ数など色々な意味での薄さに閉口していた頃で、久々に本気で読める伝奇ジュブナイルの登場に感激したものです。毎回異なる人のエゴ、トラウマをテーマとして扱い、心の弱さを刃にして襲いかかる遺産継承者に対し、時には敵の主張に共感すらしながらもひたすら説得を試みる主人公矢神遼の、ともすれば愚かしい姿は思春期の自分のハートを激しく揺さぶりました。弱いのに曲がらない、弱いからこそ屈しない、それは新しいヒーロー像でした。ページ数はシリーズが進む毎に頼もしさを増していき、最終巻はオーバー500P。中身も濃厚なまま完結を迎えファンタジア文庫屈指の名作シリーズになりました。進化した文明は全てのものを個人化していき、自分以外には誰も使えないアイテムに囲まれて孤立していく・・・危険が無いので群れる必要も無い、無限に生きられるから子孫を残す必要も無い、そんなディストピア世界イェマドの設定は文明発展への警鐘を鳴らした往年のSF小説を思わせる深さがあります。
ザンヤルマの剣の本来の使用意図などはエヴァンゲリオンの人類保管計画を連想したりもしますが、クライマックスで内面世界に突入しそのまま出て来ることがなかったあちらよりも、テーマを完遂させており前向きな読後感を残すこちらの方が物語として完成されていると思います。単にこれは自分が自己犠牲的エンドが好きなだけかも。ラスト、過去に戦った遺産継承者たちが遼のことを少し想う描写はグッと来ます。
今改めて読み返してみると遼が恵まれているのはザンヤルマの剣を持っていることでも万理絵に愛されていることでもなく、神田川が友達にいるという事に尽きる気がします。自分と正反対の友人がいるって素晴らしいことですね。
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