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2007.04.30 

武富健治「鈴木先生」1,2巻


だけど この謎かけが真意を打ち明けるにふさわしい相手かをはかる取り返しのつかない最後の賭けだとしたら――――オレはなんとしても今日!真実にたどり着かなければならないんだ(1巻P35より)

理想の教育に燃える若き男性教諭、鈴木先生が教え子のデリケートな問題と正面から向かい合う。
舞台は区立緋桜山中学校。2年A組の担任教師、鈴木は給食時間中に問題行動を起こす男子生徒、出水(いずみ)に頭を悩ませていた。必要以上に食事をかき混ぜ、汚い言葉で周りを不快にする・・・優等生だった出水がなぜ突然そんな行動に出たのか、いくら考えても分からない鈴木。実はその引っ掛かりは鈴木自身の心の奥深くの葛藤と繋がっており・・・
マンガがあればいーのだ。記事を読んで以来、たまらなく読みたくなって探してたのですが、ようやく1,2巻ゲット。お、面白ぇぇぇ!今日びの中学生を扱った事件としてはそれほどセンセーショナルなものはありませんが、思春期真っ只中の子供達の微細な心のヒダ、青春の苦悩に対して非常に真剣に、真摯に向かい合っている印象です。傍からみれば中坊一人の些細な問題でも、本人にとってみればここまで生きてきた十数年の生き様が問われる譲れない局面だったりするわけで。なあなあの事無かれ主義に別れを告げ、オトナの正解ではなく生徒達にとってのベストを追求していこうとする鈴木先生の思いに胸が熱くなります。もー初っ端の第1話「げりみそ」から非常に熱い。そして深い。表情から訴えかけてくるような生徒の生き生きとした姿に、鈴木先生の鋭い観察眼があいまって非常に味わい深い作品になっています。暗中模索、ベストを尽くしてさえいい方向を見付けられないどん詰まり感と、霧の晴れるような名指導が同居していて素晴らしい。いい方向にせよ悪い方向にせよ、生徒の関係も先生の関係もすべてが変化していくのが鈴木先生の見所。元の鞘に納まるなんて事はなかなか無いのですね。いつも思い込みと勘違いですれ違いばかり。それでもぶつかり合って主張する事で自分の存在意義を証明しようとするわけです。大人も、子供も。人生これまでぶつかる事を極力避けてきた自分のような人間にとっては、なかなか身に積まされる一冊。
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投稿時間 01:18 | 漫画 | コメント(0) | このエントリーをはてなブックマークに追加 |
2007.04.28 

王領寺静「異次元騎士カズマ」


「で、オレは、教えてやった。その男の口をふさげばいいと。人間の口をふさぐ方法は、3つある。買収するか、そいつの秘密をにぎって逆に脅すか、それともいっそ殺しちまうかだと」実にオリビエらしい見事なまでに不道徳なそのアドバイスに、オレは、少し青ざめながら聞いた。
「それで?」(剣奴王ウォ-ズ2巻P53より)


80年代後期、少女向け恋愛小説レーベルの集英社コバルト文庫で人気作家だった藤本ひとみが"王領寺静"という別ペンネームで角川文庫に書いた少年向けライトノベル。熱血サッカー青年カズマが歴史をまたにかけて大暴れ。手に汗握るアクションファンタジー。「黄金拍車」「骸骨旗トラベル」「剣奴王ウォーズ」と3シリーズ合わせて10巻が刊行されたが未完。
高校2年生の桜木和馬は校舎の非常階段で女子に告白されている最中、突如異世界へ飛ばされてしまう。気が付くとそこは中世ヨーロッパらしきフロリン王国。カズマは元の世界に戻るため、怪しい魔術師ミザールに命じられるまま騎士見習いとしてブルゴーニュ家へ潜り込む。
まだ"ライトノベル"と呼ばれるジャンルもない時代に生まれ落ちたジュブナイルの大傑作。ウルヴァリンのような驚異的な回復能力と黄金の右足で、フランス貴族からローマ剣闘士まで蹴って蹴って蹴りまくる!瀕死状態で四面楚歌、絶対絶命のピンチを「痛ぇよっ!」のセリフ一つで凌ぎ切るカズマはマジ漢。何度読み返したか分からない思春期のバイブル的存在であります。
あくまで少年向けファンタジーとして描かれつつも、徹底した時代考証と細かい描写のリアリズムでその時代を知る楽しさを教えてくれるなかなか稀有な作品でした。読んでいるうちに欠片も興味の無かった世界史に少し興味が出てきたり。そういう意味では小説の帝都物語に近い立ち位置でしょうか。史実を絡めながらも展開ではムチャをする、というような。架空の主人公が歴史の立役者となっていく展開に当時の自分はシビれました。加えて視点が一人称で描かれているのもより没入感を増していて、まるで歴史に立ち会っているかの様な感覚すら覚えたものです。
やっぱり1から架空の世界観を構築するなどというのは、一部の変態作家しか成し得ないとんでもない行為なわけで、よく調べもせずに"なんちゃって中世ワールド"になるよりは、こういう形のファンタジーの方が断然説得力が増します。執拗なまでの武器、服装、町並み、食べ物、性生活、身分制度のウンチクがステキ過ぎます。
サーラの冒険が完結し、封仙娘娘追宝録も続刊が出た昨今の奇跡的なライトノベル界隈。この異次元騎士カズマが完結さえしてくれれば、心残り無くラノベ卒業出来るんですが・・・藤本ひとみセンセがライトノベル作家を卒業してしまった今となっては二度と続きが描かれる事は無いのでしょう。だから私も死ぬまでライトノベルから卒業できないのです、きっと。剣奴王ウォーズ2巻ラストの鬼の引きから早15年。今宵もロゥマ軍団数千を相手にカズマがどう戦うのか、熱く妄想しながら寝床に就くのです。続き読みたい。


投稿時間 00:22 | 小説 | コメント(17) | このエントリーをはてなブックマークに追加 |
2007.04.08 

町山智浩「映画の見方がわかる本 80年代アメリカ映画 カルト・ムービー編 ブレードランナーの未来世紀」


「私はいかなる映画の影響も受けていない」とクローネンバーグは言う。「私は熱狂的な映画ファンだったことは一度もない。私の映画には他の映画からの引用はない。私の映画が言及しているのは私自身だ」(P11より)

知る人ぞ知る映画雑誌、『映画秘宝』にて連載されたコーナー「イエスタデイ・ワンスモア」を訂正加筆した上で一冊にまとめたもの。80年代に撮られた約10作品を、企画された意図から映画監督本人の生い立ち、撮影当時に監督自身が置かれていた状況等を照らし合わせ"こういう作品になった理由"及び作品の本質に迫る。表題2作のほか、「ビデオドローム」「グレムリン1,2」「ターミネーター」「プラトーン」「イレイザーヘッド」「ブルーベルベット」「ロボコップ」を解説。
友人の引越しを手伝っていて発見し、手伝いもそこそこに読み耽ってしまった一冊。後日購入しました。「ロボコップ」にコーフンしてダンスを真似、コタツでビビリながら「エイリアン1,2」「ザ・フライ」を見、ビデオデッキの無い我が家を嘆きながら「ビデオドローム」に想いを馳せ、「未来世紀ブラジル」でラストシーンに憤慨し、「トークレディオ」「サルバドル」にショックを受け、「ブルーベルベッド」が理解不能だった私にとっては、それまでの疑問を全て晴らしてくれる素晴らしい解説書。一つの作品をあらゆる角度から検証することで、面白い面白くないの主観的、批評的二元論ではなく、様々な状況、要因による必然として組み上げられていく一本の作品の生い立ち、最終的に作品の持ち得た性質を感じさせてくれます。
こういう解説本を読んで未見の作品まで観た気になってしまうのは、あまり良いこととは言えないのですけども、考察と細かいウンチクはやっぱり何度読んでも楽しい。「ハウリング」の獣化シーンと「遊星からの物体X」のモンスターの皮膚がぬめりというか、シズル感が似ているなーと常々思っていたら同じ特殊メイク担当だったり、妙~なところで「ビデオドローム」と「ターミネーター」が繋がったり。読み進めるほどに霧が晴れる様に氷解していく長年の疑問。何より読んでるうちに観終えた作品をまた観たくさせる"力"がこの本にはあります。
どうも私は面白いかどうかの批評よりも、こういった解説本の方が性にあっているみたい。そして人を楽しませようとする映画よりも、作り手が自らを投影したオナニー映画の方が好きだという事を痛感しました。上に引用したクローネンバーグのセリフじゃないけど、創作のどこかには必ず作り手が投影されるものだと思うです。それが強烈であればあるほど、それを観た人間に大きなインパクトを与えるのではないでしょうか。

関連リンク:ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記
投稿時間 21:35 | 書籍 | コメント(0) | このエントリーをはてなブックマークに追加 |
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